日本語学習を考える
英語を学習していると、ふと自分はどのように日本語を学習して日本語ネイティブに至ったのだろうか?と思う時があります。このホームページを読んでいる方のほぼすべてが日本語で苦しんだ、という経験をほとんどしたことがないと思います。普通に考えれば、幼少期から日本語に慣れ親しんでいるので出来るようになった、と答えるでしょう。英語のネイティブの方も同じ感想を持つとは思いますが、ここでは敢えて日本語学習者の立場で日本語について思ったことを例を色々と挙げて考えたいと思います。日本人にとってはすべて当たり前のことですが、学習者の立場で考えると、非常にハードルが高いです。
毎日は、まいんちと発音することがある。まいにちと発音する場合もある。
数の数え方。いっぽん、にほん、さんぼん、よんほん、ごほん、ろっぽん、ななほん、じゅっぽん、ひゃっぽん、せんぼん、いちまんぼん。規則性がありません。。。。なぜいちほん、にほん、さんほん、よんほん、ごほん、ろくほん、、、、ではないのか。特にろくほんは、ろっぽんという言うらしく6の場合だけ、後続の本の漢字に当たる部分だけでなく、数字の読み方も変わる。すべて覚えるしかありません。
わたしのいえ、は正しい言い方。わたしんちも正しい言い方。しかし、「ん」が必ずしも所有格として代用できるわけではない。僕のコップは、ぼくんこっぷとは言い換えれない。同様に、家の代用として「ち」が使われているが、これも常に代用出来るとは限らず、家を購入する → ちを購入する とは言い換えれない。
かあさん、とおさん、という表記だが、発音はかーさん、とーさんになる場合がある。「お」をつけて丁寧にして、おとーさん、おかーさんという言い方もあるが、何でもかんでも「お」をつければ丁寧になるというわけではない。お先生やお空気とは言わないが、おだいじん、や、お水はOK。日本人はこれをどうやって使い分けているのか?
話の腰を折る。本腰を入れて~する。なぜ腰である必要があるのか?話の筋を折るではダメなのか?本腹を入れて~する。はダメなのか?
腕白。腕が白いということは、日光に当たっておらず弱々しいので、虚弱さを意味するのではないか?
お転婆。おてんば。おばあさんがころぶ。若い娘とは無関係だが、なぜこれが若い娘に限定した表現になるのか?
焼きもちを焼く。かんしゃくもち。同じ「もち」だが、片方は名詞としての rice cake を意味し、片方は have の意味を持つ。語源を調べると、「妬く(やく)」と言うことから、「焼く」に掛けて、洒落として使われているが、現代人はそのような語源を理解した上で「やきもちをやく」という表現を使っているのか?
らちがあかない。ここでの「らち」とは何か?「らち」を単体で出されると、「拉致」しか思いつかない日本人がほとんどですが、らちがあかないという表現だと、別の意味であることはすべての日本人が分かっていると思います。しかも、らちがあく、という表現はないので、否定形には出来ない。なぜ日本人はこれを否定形で使わないのか?肯定形でしか使えない例としては、「いい線をいっている」もある。
弱虫。泣き虫。しかし強虫、笑い虫とは言わない。
おちゃのこさいさい。簡単という意味。おちゃのこ、も、さいさい、も分割して単独で考えると、意味不明。ただし、連語になると途端に意味を持つ。
津波。「波」単独と「津波」では何が違うのか?津波は海で起こる。波は海以外でも起こる。我々日本人はこの使い分けをどのように暗記したのか?この「津」自体の意味を意識している日本人はいるのか?
虫に関する表現。虫歯、虫の知らせ、虫の居所、虫唾が走る、本の虫、虫のいい話だ。なぜ虫が使われているのか不明。日本人はこれらの表現を、日本語慣用句単語集を使って1つ1つ暗記しているのか?虫の居所がいいとは言えず、否定形でしか使われない。又、動物の居所が悪いや猫の居所が悪いとも言わない。
英単語は、複数の意味があるので混乱すると言われているが、日本語も「そば」という単語でたくさんの意味がある。(1)食べる蕎麦(2)となり(3)言っているそばから、の「そば」(4)耳をそば立てるの「そば」。難文としては、私は父のそばが好きだ。前後の文脈がないと、もしくは漢字表記されていないと、父の脇が好きなのか、父が作った蕎麦が好きなのか不明。文脈で意味が変わる例。
気だるいは、「きだるい」とは読まず「けだるい」と読む。日本人はこれをどのように間違えずに発音しているのか?
めくじらを立てる。くじら → 海にいるクジラ とは無関係で、目くじらとは、「目尻(めじり)」を意味する「目くじり」が変化した語であるが、誰も語源を知らないで使っている。
お坊さんとは無関係だが、いばりん坊、怒りん坊、聞かん坊、食いしん坊、寝坊、さびしん坊、赤ん坊という表現がある。しかもすべての単語に~坊を付けてもいいわけではない。いばる、おこる、ねる、はすべて「る」で終わる動詞だが、寝りん坊とは言わない。又、それぞれに「さん」を付けて丁寧な表現に出来るが、赤ん坊さんとは言わない。
なきべそをかく。「べそ」とは何か?「かく」は書くではなく、「掻く」。
音をあげる。ねをあげると発音する場合と、おとをあげると発音する場合がある。ねをあげると読む場合は、あきらめる、や、こらえきれなくなる、などの意味で使う。おとをあげると発音する場合は、音量を大きくするという意味。
だんまりを決め込む。だまりを決め込むとは言わない。なぜだんまりに変化させる必要があるのか?
うすらばか、うすらとんかち。「うすら」という強意語を接頭語につけているが、ばかととんかち以外には接頭語として使われない。
調味料の前につける「お」は、日本古来の調味料には「お」を付けてもいいが、外来の調味料には「お」を付けない。○おしょうゆ、○おみそ、○おしお、○おさとう✕おドレッシング、✕おソース
先祖と祖先。漢字の順序が逆になっただけで語感が異なる。✕祖先供養。○先祖供養。祖先=すごい前、先祖=すごい前と近い前。
漢字の勉強をよくしている外国人が、「貴殿」という単語と「お客様」という単語を学びました。しかしそのまま「貴様は今日こちらへいらっしゃいますか?」と言うと大変に失礼です。丁寧語の接頭語と丁寧語の接尾語を組み合わせると、突然失礼な単語に生まれ変わる。
以上、日本語学習者にとってハードルの高い日本語をつらつらと挙げてみましたが、我々日本人にとってはどうでしょうか?
我々が使っている日本語は極めて複雑で、それに比べれば英語はここまで難解なものではありません。英語の学習が困難と感じた場合は、一度自分の得意な(というか母国語である)日本語の難解さに立ち返り、それよりは簡単である英語、と捉えてはいかがでしょうか?
日本人がこの難解な日本語をどのようにマスターしているのか?日本語のルールなどを意識せずに、我々は日本語を覚えてきたはずです。文法やルールなどを無視して、まずは語句をありのまま覚えるという思い切りの良さ・わりきりも英語には必要だと思います。